出産育児一時金から後期高齢者医療制度のあり方を大きく変える可能性




厚生労働省は、出産育児一時金について、75歳以上の高齢者に7%分を負担させる方針を示し、後期高齢者医療の保険料に上乗せとなりますが、後期高齢者医療制度のあり方を大きく変える可能性があるものと考えられます。

出産育児一時金の増額とは

まず、出産育児一時金の制度と、2023年度からの増額の経緯について簡単におさらいします。

出産育児一時金は、女性が出産した場合に、健康保険から、子ども1人につき原則として42万円を受け取れる制度です。2023年度から5万円増額され47万円になることが決まっています。

出産育児一時金が増額されることになった理由は、出産費用が上昇し続け、42万円では賄えないケースが増えてきたためです。

2012年以降でみると、2012年は平均値416,728円・中央値410,110円だったのが、2019年には平均値460,217円・中央値451,120円と、7年間で約10%も上昇しています(【図表1】参照)。また、2022年分はさらに上昇するものとみられます。

これに対し、出産育児一時金の額は、2009年に現行の42万円に設定されて以来、これまで増額されてきませんでした。今回の増額は、出産費用の著しい増加に合わせたものです。

引用元 「出産育児一時金」75歳以上も7%分を負担へ…ゆらぐ後期高齢者医療制度

出産育児一時金の財源は、74歳未満の世代が保険料を負担する公的医療保険制度の枠内で賄われてきましたが、今回、厚生労働省が提示した案は、後期高齢者にも応分の負担をさせるものであり、後期高齢者の中でも、低所得者の負担を抑え、高額所得者の負担割合を大きくするために、後期高齢者医療制度の保険料の変更を検討しています。

今後、高齢者の人口増加の傾向から、現役世代の負担が過大になっていく中、社会保障制度を構築する上での世代間の格差と所得の大小による格差の両方を考慮し、公平な制度の設計を考える必要があります。



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