厚生労働省、生活保護受給者の受信にマイナンバーカードの利用を検討
厚生労働省は、生活保護受給者の医療機関の受診について、紙の医療券からマイナンバーカードを使った受診に原則切り替え、必要以上に受診する傾向がないか、マイナンバーカードを利用した早期の状況把握から、改善策などを助言する案を提示しました。
生活保護受給者の医療費は全額公費負担になるため、受診回数が多いなど医師が必要限度を超えると認めた場合、福祉事務所が受給者に改善を指導している。医療券を基にした現行制度では、指導対象者が判明するまで受診から約2カ月かかるが、マイナンバーカードだと受診翌日にも履歴をたどれ、早期発見につなげられるという。
指導の実効性にも課題があり、20年度の指導対象者2320人のうち、改善したのは約半数にとどまる。頻回受診する人の割合は、1人暮らしの人は同居人がいる場合と比べて1・5倍に上り、無職だと就労している人の2倍だったという調査もある。社会から孤立していると居場所を求めて医療機関を受診することもあるとみられ、報告書では頻回受診者を医療機関以外の居場所につなぐといった対応を挙げ、「早期のアプローチが必要だ」と提案した。厚労省は今後、頻回受診をやめない人を、指導だけでなく、生活支援の対象とするよう運用を見直す。
素案では、生活保護世帯の子どもが高卒で就職して独立した場合などに、新生活準備に使える一時金を交付することも盛り込まれた。ただ、大学生が生活保護を受給できない問題について、素案では「慎重に検討する必要がある」と記載されただけで、今回の改正での導入は見送られそうだ。素案では「大学進学後の生活費の支援は生活保護世帯と一般世帯で共通する課題」とした上で、「生活保護の枠組みにとらわれず、教育に関する政策の中で幅広く検討すべきだ」とした。
現在、マイナンバーカードを保険証として利用するために、必要な顔認証付きカードリーダーなどの設置が進んでおり、来年春頃にはすべての医療機関・薬局で、マイナンバーカードを保険証として利用できるように取り組まれています。
厚生労働省は、生活困窮者向けの就労準備などの支援事業を、生活保護受給者も利用できるよう考え、生活困窮者と生活保護受給者に関するそれぞれの制度の連携を強める方針です。