読売新聞論説主幹「黒川氏の定年延長は、法務・検察当局のご都合主義とお家騒動」と一刀両断。それを捻じ曲げ世論に発信したのはマスコミ。官邸に非がなかったことが判明
「検事長の「定年延長」問題は、法務・検察当局のご都合主義の面も否めないが、政官界やマスコミを巻き込み、安倍政権を揺るがす一大事にまで発展してしまった。」と語るのは、読売新聞グループの調査研究本部客員研究員の小田尚氏です。
小田氏は読売新聞の「補助線」(社説のようなもの)で、検事長の定年延長は、法務省のお家騒動だと語っています。
安倍総理は黒川氏より林氏の方と親しかった。
一部のマスコミは、安倍総理と黒川氏の親密性を前面に出して報道していましたが、小田氏によると、安倍総理は黒川氏よりも林氏の方が親しいということのようです。
検察庁法は検事総長が63歳で退官すると定める。政府は1月31日の閣議で国家公務員法の規定を使い、2月に63歳となる黒川氏の半年の勤務延長を決定していた。
政府は3月に検察庁法改正案を国会に提出したが、内閣などの判断で検察幹部の定年を3年延長できるという特例規定が、野党から「後付けで黒川氏の定年延長と整合性とるものだ」と批判され、成立を見送ったばかりだった。
この間、メディアは「法務・検察関係者」を情報源に「黒川氏は安倍政権に近すぎる」「稲田氏が後任の検事総長に林氏を推薦したが、官邸が黒川氏を処遇するよう求めた」などと報じていた。
だが、首相官邸関係者から見えた景色は、これとは異なる。
安倍首相も「私は、むしろ林さんと親しい。黒川さんはよく知らないんだ」と当惑していた。
引用元 読売新聞2020/6/20 [補助線]法務・検察の不都合な真実…調査研究本部客員研究員 小田尚より
一部のマスコミで頻繁に見受けられる「ある情報筋」「ある関係者」の証言で、事実が歪められた可能性があるのです。
では、なぜ黒川氏が?と思いますが、こんなことがありました。
政府関係者によると、黒川氏ばかり官邸との「近さ」が取り沙汰されるが、林氏も官邸から一目置かれてきた。安倍晋三首相が「2人とも優秀」と漏らしたこともあるという。
ただ、林氏は法務省刑事局長時代の2017年に当時の上川陽子法相と対立し、名古屋高検検事長に転出。一方、黒川氏は法務事務次官から東京高検検事長へと本流を歩み、「検事総長レースは勝負あった」(政府関係者)との見方が出ていた。
この記事によると2017年の時点で、黒川氏と林氏の出世レースは、勝負が決まっていたようです。
黒川氏の検事総長の指名は昨年10月にすでにされていた。
小田氏は、既に黒川氏が検事総長になるというのは、首相官邸ではなく、法務省内部で決まっていたと指摘しています。
検事総長の任命権は、内閣にある。具体的な人事は、検事総長が後継を指名し、法務省を通じて首相官邸に伝え、了承を得ることで決まる。官房副長官(事務)と法務次官が窓口を務め、首相らは関与しないのが、長年の慣行だ。
政府筋は、安倍政権もこれを踏襲している、と主張する。昨年10月、稲田氏が、後任の検事総長を黒川氏に託し、自身は今年1月で退職することで、杉田官房副長官の了承を得たという。
検事総長はほぼ2年で交代するのが慣例で、一昨年7月に就任した稲田氏にとって、やや早めの退職となるはずだった。稲田氏の要請もあって、この人事はしばらく伏せられた、ともいわれている。
そのうちに年が明けたが、稲田氏は「4月の国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス=新型コロナウイルス対策で延期)を花道にしたい」と言い出し、黒川氏の定年前に辞めようともしない。
広島地検が1月、自民党の河井克行法相の妻、案里参院議員陣営による公職選挙法違反(買収)容疑の強制捜査に入ると、稲田氏は「操作の指揮を執りたい」と、そのままポストに居続けた。
このつじつま合わせに奔走した辻裕教法務次官が首相官邸に持ち込んだのが、くだんの黒川氏の勤務延長案だ。森法相がこれを閣議請議し、閣議決定されたもので、ある意味お家の事情だった。
引用元 読売新聞2020/6/20 [補助線]法務・検察の不都合な真実…調査研究本部客員研究員 小田尚より
小田氏によれば、2019年10月、稲田氏が後任は黒川氏に託したい、自分は1月に辞めると示したというのです。もうこの時には、後任は黒川氏にと指名されていましたが、年が明けて、それがちゃぶ台がひっくり返されたせいで法務省が混乱したという話です。
小田氏の解説が正しいならば、野党と一部のマスコミの主張が大幅にひっくり返ることになります。
野党と一部のマスコミは、政府は黒川氏を検事総長にしたいがために無理矢理定年延長させたと主張しています。しかし、それ以前に、既に黒川氏が検事総長から指名を受けていたので、検事総長の指名通りに進めるには、黒川氏を定年延長するしかなかったのです。
小田氏によれば、官邸が主導して検察人事をいじくりまわそうとしたからでなく、法務省内部のお家騒動が波及したということなのです。
黒川氏の処分も官邸が指示したものではなく、法務省が提案し、官邸が了承したに過ぎない。
黒川氏が、産経新聞と朝日新聞の社員と賭けマージャンを行なって、「処分が軽い」「官邸が指示を出した」といわれましたが、小田氏はさらにこう続けます。
「反黒川」は「反安倍」と親和性がある。5月8日に検察庁法改正案が実質審議入りすると、著名人らがツイッターに法案への抗議を表明し、急速に拡散した。
検察OBも登場した。5月15日に法案反対の意見書を法務省に提出し、「検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、検察の力を殺ぐことを意図している」と断じて、首相を批判する。
では、この法案をどの官庁がどんな目的で書いたというのか。
黒川氏の処分(21日)をめぐっても「法務省が懲戒が相当と判断したが、首相官邸が懲戒にしないと決め、法務省内規による訓告となった」とする「法務・検察関係者」の証言が一部で報じられ、国会などで野党が真偽を問うた。
森氏は26日の参院法務委員会で「事実と違う。検事総長も訓告が相当と判断し、処分をした。それを首相に報告した」と否定した。
実際は法務省が訓告を提案し、官邸が了承したに過ぎない。処分が甘いとする世論の反発を招いたのは計算外だったろう。
引用元 読売新聞2020/6/20 [補助線]法務・検察の不都合な真実…調査研究本部客員研究員 小田尚より
このように、黒川氏の処分を提案したのも法務省で、官邸は報告を受け了承したに過ぎないのです。
振り返ってみると、今回の元凶は法務省内のお家事情とマスコミが重用する匿名の「法務・検察関係者」の証言にあります。
最近でも共同通信が「香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診されたが、拒否していた」という誤報も、匿名の「複数の関係国当局者が明らかにした」としていました。
このように、一部のマスコミによる報道は、時に事実を捻じ曲げ、問い詰められるべき人物さえも挿げ替えられてしまうのです。
こんなマスコミが存在することを国民としては、本当に警戒する必要があると思います。
マスコミと野党の嘘によって国民の判断がねじ曲げられてしまうからです。そして結果それは自分自身にかえってきてしまいます。本当に注意が必要であることを示唆してくれる重要な論説であったと思います。